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会計が256倍わかるページ

 

<本記事は2011年9月16日にはてなダイアリーにアップした記事を移転した物です>

 

 

はじめに



数年前「さおだけ屋。。」がブレイクした時、プチ会計ブームがおきた。

すごく親しみやすい入門書が書店に並んだり

ネット上にも会計入門のページが結構登場してきた。

その多くのものが、

会計はビジネスマンの常識



とか

会計やめますか?



それともビジネスマンやめますか?



的な脅迫観念を植え付けて、読者を引き込もうとしている。


しかし、よっぽど危ない会社じゃない限り、自社の決算報告書なんて見る人いないし

デイトレだって、4半期に一度の決算短信なんて情報が遅すぎて、ほとんど参考にしていない。


ましてや起業するサラリーマンなんて、ごく僅かだ。


つまり、残念ながら、会計を勉強しても

そんなに役には立たない



のが実情なのだ。


では、なんで私はこのドキュメントを書こうと思ったのか? 

なんで私は会計に非常に興味を持っているのか?

その答えは、ズバリ

会計が面白い



からである。


こう書くと、私がどっかの会社の経理部門にいる会計オタクか

会計事務所の従業員だと思われるかもしれないが、さにあらず!


私はしがないエンジニアリーマンであり、

理系街道まっしぐら



人生である。


でも、これまで会計を知る機会が何度かあり、会計概念の面白さを味わってきた。

それを少しでも多くの人(特に理系の人)と共有したいというのが本ドキュメントの主旨である。

会計は、人類が創り出した大きな知恵であり

ルネサンス時代のイタリア数学者(パチオリ/パチョーリ)が体系化したものである。

それは、微分/積分と同じように

単純で 自然で 美しい



ものなのだ。


最近、随分わかりやすい入門書が出てきたといっても

「わかりやすいが、核心をついていない」と感じていた。


ここに書く会計入門は、ずばっと

ど真ん中ストレート



の直球で、会計の自然で美しい形を表現したつもりだ。


会計の美しい形をできるだけ多くの人に知ってもらいたいと思う。

そして、もしそれがビジネスの役に立てば、これ以上の喜びはないではないか!



第1章 会計は逆ダイエット!?




やせたい!



読者の人でダイエットをやったことのない人は、まずいないと思う。

現代先進国で普通に生活していると、ほっとくだけで

人はすぐ太る



これとは全く逆に、厳しい現代社会で会社がビジネスをやっていると、

会社はすぐやせる



人々が「やせたい!」という切実な思いを抱くのと全く同じように、

会社経営者は「会社を太らせたい!」と思っているわけである。


会計の論理構造はダイエットの論理構造に非常に似ている。

そして、最近、これでもか!というほどダイエット番組が頻繁にオンエアされている。

このように多くの人々の中でダイエットの知識が共有されている今、

会計を理解する足がかりとして

ダイエットのアナロジー



を使うのがベストだと思う。


カロリー計算やってる?



ダイエットをやる時、りちぎな人は日々のカロリー計算をやっているはずである。

摂取したカロリー以上のカロリーを消費すると、やせることができる。

これと全く同じように、消費したカロリー(お金)以上のカロリー(お金)をゲットすると

会社は太ることができる。

式で書くと、ダイエットの場合

(消費カロリー) - (摂取カロリー) = (やせる量)



で、会計の場合

(売上) - (費用) = (儲け)



となる。


日々のカロリー計算に相当するのが、会計における損益計算書となる。

たったこれだけ?



そう、たったこれだけ。

損益計算書は結局この式に示した引き算で終わってしまう。


カロリー計算をきっちりやっている人は、ダイエットに成功する(確率が高くなる)。

これと同じように売上と費用の管理をきっちりやっている会社は、太ることができる(確率が高くなる)。


ここで重要なことはダイエットの理論は、

やせる方法論



でしかないということだ。



つまり、いくら頭でダイエット理論をわかっていても、実践できなければ決してやせない。

これと全く同じように、会計、それ自体は単なる

太る方法論



にすぎない。



いくら会計知識が豊富な銀行マンが脱サラしてラーメン屋をやったとしても、

会計のことを何も知らない

本当にうまい



ラーメン屋に勝てないようなものだ。

やはり会社経営の最重要課題は勝てる(儲かる)ビジネスモデルの確立である。


でも体重はどうよ?



話を元に戻そう。カロリー計算が大切なのはわかった。

でも、結局は体重が減らないとダメだよね。

つまり、

ダイエットの総決算



が体重〇〇kgということになる。



これと同じように、会社も体重に相当する

バランスシート(B/S)



が、とどのつまり

ファイナルアンサー



となる。



ファイナルアンサーと言ったが、体重もB/Sも

体や会社の <ある時点の状態> を示したもの、つまり

スナップショット



というのがより正しい。



つまり、体重というのは、ダイエット目標ではあるけれど、ダイエットが終了しても存在し続けるものだ。

皆よく知っているように、ダイエットが終わってリバウンドすると

見るも恐ろしい体重



が待っている。

これと同じように、例えば5ヵ年計画などを立てて負債半減を目標に経営をしたとしても、

その後怠慢経営をしたり、経営環境が変わってしまうと

見るも恐ろしいB/S



が待っていることになる。


普通、体重は毎日決まった時間に量る。

これと同じように普通、企業は年に一回決算報告をする。

つまり、ダイエットでは1日が基準時間単位で、会計では1年が基準時間単位なのだ。

でも、体重とB/Sはスナップショットなのだから、

意味があるかどうかはともかく



理論上、1分おきに体重を量ることも可能だ。


これと同じように1日毎にB/Sを作成してもかまわない。

でも体重を1分毎に量るのと、B/Sを1日毎に作成するのでは、本質的に異なる点がある。

それは、体重は

体重計



というものが存在して非常に簡単に測定できるのに対して、

B/Sには

自動計算してくれるマシン



が存在しない、ということである。


こう書くと、「最近はコンピュータに帳票を入力してボタン一発でしょ!」

というツッコミを入れる人がいると思うが、さにあらず!

決算をするためには

棚卸し



という荒行(あらぎょう)が存在する。

POSシステムが発達しているコンビニなんかは

もしかしたら毎日B/Sを作成することも可能かもしれないが

普通は毎日B/Sを作成することは事実上不可能だ。

この辺の事情は、次節で詳しく述べたい。

やっぱ脂肪率が重要でしょ!



最近は便利な機械があって、体重計に乗ると体重と同時に脂肪率を測定できる機能があったりする。

「体重が同じでも、脂肪率が低いと筋肉が相対的に多く、太りにくい体となる」

というのは、

ダイエット理論の常識



だ。

つまり、体重という測定量だけでなく、脂肪率という測定量も考えた方が、より正確な分析ができるわけである。


意味のある数字は、多ければ多いほどよい。

例えば、脂肪率だけではなく、基礎代謝量とかも簡単に計れる機械が登場すれば

じゃんじゃん売れるだろう。


ダイエットのアナロジーでいくと、会計における脂肪とは

負債



といった所だろうか。。


皮下脂肪はなかなか取れないので固定負債で、内臓脂肪は増減が激しいので、流動負債かな?

ダイエットの場合、基礎代謝が高いと良いので、会計だと資本回転率とかがそれに相当するかもしれない。

このように、ダイエットのアナロジーで会計のいろいろな指数を考えていくと、

スーっと



頭に入ってくることがわかる。


ところで、先にも書いたとおり、ダイエットと会計の決定的な違いが、

「体重は簡単に量れるのに、B/Sは簡単には作成できない」という所にある。

この原因は、ある意味、スケールの違いと言える。


ダイエットの場合、体重、脂肪率、基礎代謝の順で測定が難しくなる。

これに対して、会計の場合、負債や資本などより、総資産の方が算出するのが難しい。

つまり、会計の場合

細かい数字の足し算



が必ず必要になってくるのだ。


ここが決定的にダイエットと異なる。


ダイエットでは、ファイナルアンサー or スナップショットである体重が、体重計に乗れば

一発でわかる!



のに対して、会計ではいちいち計算したり数えたりしなくてはいけない。

これが、会計を近寄り難く感じさせる大きな原因となっている。

でも、ここまで読んだ方は、もう心配ない

「体重計に乗ること=決算をすること」という図式が頭の中にあるので

どんな小難しい本を読んでもついていけるはずである。




第2章 新しい概念=存在理由




B/Sが会計概念の中心




ダイエットのアナロジーをもう少し続ける。

今あなたの友達がダイエットをしているとしよう。その友達があなたに

「昨日何を食べて、どれぐらい運動して..」と日々のカロリー計算の

ことを長々と話したとする。

「そう、それは大変だね」とあなたは言ってはみるが、

内心こう思っているに違いない

で、結局なんキロ減ったの?




もっと正確に言うと

何キロから何キロに減ったの?



会計において、まさにこの質問に答えてくれるのが

バランスシート(Balance Sheet B/S)なのだ。


でも、前章で述べたようにB/Sを作成するのは、体重を量るより、はるかに手間がいる。

それに加えて、B/Sを計算するには体重にない新しい概念が必要となってくる。

それが、

存在理由



だ。


この存在理由の概念こそが、会計のもっとも面白いところであり、

会計を非常に有益なものにしている。


なにゆえ君は存在するのか?



存在理由という、ちょっと仰々しい言葉を引っ張り出してきたが、

実は「そのお金誰のもの?」という非常に簡単な話だ。


突然だが、今あなたの目の前に100万円の札束が

ぽつん



と、置かれていたとしよう。


あなたの頭の中は、いろいろな妄想が膨らむに違いない。

「誰かが置き忘れたのかな?」「犯罪に関係するやばいお金かな?」

「もしかしたら、神様が哀れな俺にお恵みを授けたのかも?」

「いや、これはドッキリだろう!どこかにカメラがあるに違いない!」


この状況を冷静に分析してみよう。

100万円というお金が存在することは、

紛れもない事実



だ。

しかし、このお金が誰のものであるか?によって、あなたの取り分は

全然変わってくる。




この場合、ありうる可能性はほぼ以下の3つに絞られる。



    1. 誰かが落とした 取り分5~20万円



    1. 誰かが捨てた 取り分100万円



    1. テレビ会社のもの(つまりドッキリ)取り分ゼロ

 




ここで示した例は非常に特殊な例だったが、お金という

現物/実物



は不変だが、その存在状態(存在理由)は千差万別である。

そして、その存在理由が違うと、あなたにとっての価値が全然変わってくる、ことがよくわかる。

このように、会計においては、現物以上に、その存在理由を大切に扱う必要があるのだ。


お金持ちA様、貧乏B様?



B/Sの説明に入る前に、もう一つだけ例え話をさせてほしい。

今度は、あなたの目の前に

二人の女性



がいるとしよう。

一人(A様)はブランドのスーツを着て、化粧もバッチリ、財布の中身には100万円ほどの現金が入っている。

もう一人(B様)はジーンズにTシャツ、すっぴんで財布には100円しか入っていない。

では、どちらの女性が

お金持ちでしょうか?





「もちろんA様!」というようなバカな答えをする人は、もういないと思う。

つまり、この質問には情報が足りないのだ。


もしかしたら、A様は多重債務者で、借金が1000万円あるのかもしれない(普通にリアル)

一方、B様は実は超お金持ちの令嬢なのだが、

驚愕するほどの

だめんずウォーカー



で、ヒモに100万円貸しているのかもしれない(これも結構リアルかも?)。


つまり、人の持ち物や服装だけでは、その人がお金持ちかどうかの判断はつかない、

ということなのだ。その人が持っている現物(資産)の

でどころ(存在理由)



をしっかり把握しないとダメということになる。

この理屈がそっくりそのまま会計のケースにもいえる。


もうこれで完璧!




お待たせしました!やっとB/Sの詳細な説明に入る。

B/Sは右側と左側の2つの箱があって、左側が現物、右側が存在理由だ。



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左がリアルで、右がバーチャルと言ってもいい。

当たり前だが、左右が同じ額になるので

バランス



シートと呼ぶ。


会計の本で、細かく左(借方)と右(貸方)を説明されたあげく、

「左右が同じ額になる」といわれて、

はぁ?



と思われた方も多いと思う。

まずは、基本中の基本「左が現物、右が存在理由」

ということを理解した上で、細かい中身に入らないといけないのだ。



それでは、左右の中身をじっくり見てみよう。

会社が持っている現物(左)のことを「資産」と呼ぶ。

資産として、比較的簡単に数えられるものは、お金、土地、建物などの目に見えるものだ。

在庫(品物)も目に見える資産なので数えられるのだが

正確な額をはじき出すためには、<棚卸し>(棚にある商品を数えること)をしなければいけない。

会社の資産の中には、目に見えないものもある。

例えば、先の「お金持ちA様、貧乏B様」の例でいうと、令嬢B様は、ヒモ君に100万円貸している。

これを会計の言葉でいうと、B様は、100万円分の

長期貸付金



がある、と言う。

もちろんこの貸付金は不良債権化して回収不能になる可能性が高いのは言うまでもない。



目に見えようが、見えまいが、とにかく

ある時点(決算時点)に、会社が持っている現物が全て資産だ。

そしてその合計が左側に並ぶ。

これに対して、右側はそれらの存在理由となる。

では、

資産の存在理由



とは何だろうか?


それは大きく分けて、以下の3つの場合がある。



    1. 他人から借りた →負債



    1. 他人から貰った →資本



    1. 自分で持っている →剰余金

 



普通、会計では3の剰余金は資本の中の1つの項目となる。

というのも、会社は本来

株主のもの



で、株主が出資したお金は、会社が自分で持っているようなものだから

「自分で持っているもの=資本」という図式が成り立つのだ。

だから、存在理由は



    1. 他人から借りた →負債



    1. 自分で持っている →資本(株主資本、自己資本などの言い方がある)

 



この2つに分けるのが、会計上は正解である。


さて、ここで、いじわる質問を1つ出そう。

ある会社のB/Sの右側に「商品券」という項目があるとする。

この商品券とは何を意味するだろう?

会社が持っている商品券



と自信を持って答えた方、あなたは全然わかっていない。


くどいようだが、左が現物で、右が存在理由だ。

商品券が存在理由の箱に入っているということは、会社が持っている商品券であるはずがない。

では、商品券が存在理由となるのは、どういう

シチュエーションだろう?




そう! 会社が商品券を発行して、現金を集めたのだ。

そして、いずれは商品と交換しないといけないものなので

分類としては「他人から借りた」という存在理由(=負債)に入る。


さぁもう、怖いものは何もない。

どのような会社の、どのようなB/Sを読んでも、あなたはその意味が理解できるようになっている(はずである)。

A様/B様 再考



さぁ、次は練習問題として先のA様/B様のB/Sを作ってみよう。


B様は比較的簡単なので、まずB様からいこう。

手持ちの資産としては、現金は100円で、服がだいたい1000円ぐらいとしよう。

ヒモ君に貸したお金は100万円なので、(貸し倒れリスクはあるが)長期貸付金100万円としておこう。

結局、B様の資産合計は、100万1100円となる。


次に右側の存在理由を分析するわけだが、分析する前にわかることがある。

それは、

右側の合計



だ。これは、必ず左側の合計と同じになる。なぜかというと、右側は左側の存在理由だからだ。



では、右の中身を考えてみる。

B様お嬢様という設定なので、負債はないとしよう。

お嬢様だからお金は全部親から貰っているというのは可能性が高いが、それでは面白くない。

実は厳しく育てられていて、これまで小遣いをコツコツ貯めてきたのが10万円。

そして、残りはバイトしてけなげにヒモ君に貢いだとしよう。


以上を図にすると



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となる。

親から貰った貯金の合計10万円は資本金で、バイトで働いたお金は剰余金となる。


次はA様だ。

まず、左(現物)だが、これは単純だ。

現金が100万円あって、ブランドの服やアクセサリーの価値がだいたい50万円ぐらいだとする。

すると、左(現物)の合計は150万円ということになる。


さて、問題は右側だ。一見、A様はお金持ちだと思いきや、そのお金の出所は借金でできていた!

という話だったので、右(存在理由)には1000万円の負債が入る。

親から貰った貯金はB様と同じで10万円としよう。


負債と資本金が確定した。そして、合計は資産合計と同じ150万円になるはずなので、

残りの剰余金はマイナス860万円(普通は△860万円と書く)に

ならざるを得ない




では、剰余金がマイナスとはいったいどういうことだろう?

A様だって、今までアルバイトの1つや2つはしてきただろう。

なのに、剰余金がマイナスとは、どういうことか?


借金が1000万もあって、現在150万円の資産しかないということは、

A様は

途方もないほど



使ったか、貢いだか、それとも騙し取られた、と想像される。

その結果、A様の純粋な持分はマイナスになってしまったわけだ。


結局、図にすると



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このようになる。


特にこのB/Sは、(資産-負債)がマイナスになっている(債務超過)ので

超ヤバイ



B/Sの典型だ。

債権放棄するか、増資(親にすがりつく)にかけるしかない。


最後は少し暗い話になったが、B/Sの構造はこれまでの説明で完璧に理解できたことと思う。

B/Sさえクリアーできれば、もう怖いものは何もない。

これで、あなたも一人前の

会計のわかる



ビジネスパーソンだ!

ダイエット再考



前の章で体脂肪は負債に似ているという話をした。

でも、あらためて「体脂肪は負債だ」と言われると

なんか腑に落ちない



と思われる方もいると思う。

そう感じた方は、スルドイ!

確かに、体脂肪は体に実在する

現物



なので、左側にあるべきだ。よって、負債(存在理由)とするのはおかしい。

この辺りの事情があったので、前章では歯切れの悪い記述となったのだ。



B/Sの定義をしっかりした今、改めて体重のB/Sを定義することにチャレンジしてみよう。

左側には現物を並べるので、骨、筋肉、内臓、脂肪、血液などの体を構成する組織が列挙されるべきだろう。

では、右側の存在理由には何が並ぶのだろうか?


なかなか難しいが、強いて言うなら、

生きるのに必要でないもの





生きるのに必要なもの



かと思う。




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生きるのに必要でないものは、負債といったところだろうか?

まぁ、少し無理があるが、体重のB/Sを上記のように作ってみた。

もちろん、左右はバランスする。

では、なんで会計では非常に

自然に



右側の存在理由が定義できたのに、体重のB/Sでは無理があったのだろう?

それは、

存在理由の複雑さ



の問題だ。


我々が子供の頃のことを思い出してほしい。

親から小遣いを貰い、おかしやおもちゃを買っていた。

B/Sなんて作らなくても、お金の計算はちゃんとできていた。

つまり、子供の小遣い帳は損益計算書に近かった。

それは、なんでかというと

存在理由=親から貰ったもの



という関係しかなかったからだ。


体重のB/Sでも体はほぼ外から獲得したもので出来ている。

よって、厳密な意味では体重のB/Sの右は極めてシンプル!全て剰余金みたいなものだ。

つまり、体重の管理には

B/Sを持ち出す必要はない



わけである。



一方、会計の場合は、人類が「銀行」や「株式会社」などの知恵を編み出し、

お金の存在理由が複雑になったのでB/Sというものが必要になってきたのだ。


くどいようだが、左に現物、右に存在理由という構造は

未来永劫



変化しないし、小遣い帳よりは複雑だといっても

自然でシンプル



なことは、理解できたと思う。


さぁ、これで会計の基本部分は卒業だ! おめでとう!



第3章 美しくやせる、美しく太る




近未来キャッシュキャッシュの循環



ここまでの話で会計の基本部分は卒業だ。

どの会社の決算報告書(貸借対照表B/S、損益計算書P/L)を読んでも

その意味が理解できると思う。

勘定科目の細かい説明は、会計の本やInternetに載っている。

原理さえちゃんと頭に入っていれば、あとは簡単に理解できる。

もう、会計のジャングルで迷わなくていい!

結局、大切なのは、この3つ!




    1. 損益計算書=カロリー計算



    1. B/S=体重測定



    1. 左が現物、右が存在理由

 




でも、実は、決算報告書だけでは伝わってこない

会計のダイナミックスがある。

それが、

会社が太るプロセス



だ。


会社は、美しく太っていくことを夢見ている。女の子が

矯正下着を着けてでも



やせて見せたいのと同じように、

粉飾決算をしてでも



太って見せたいのだ。


もちろん、健全な会社は粉飾決算をしなくても、

たくましく、美しく太っていく。


「美しくやせる」ことが現代ダイエットの究極の目標であると同じように、

美しく太る



ことは、企業において究極の目標となる。


この節では、その美しく太っていく様子を会計を通じて見てみたい、と思う。



会社が太るプロセスを一言で言うと、

近未来キャッシュキャッシュの循環



だ。近未来キャッシュというのは、1年以内に(年度内に)現金に化ける予定のものをいう。

例えば、商社なら仕入れた商品で、メーカーなら原材料や組み立てたものなどを指す。

それらを売ることによって、近未来キャッシュにかけたお金より少し多いキャッシュを手に入れる。

この繰り返しによって、会社は太っていく。


会計の本の中には、この太るプロセスを下図に示したように書いているものもある。




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この図は、損益計算書を左右にわけて、B/Sとくっ付けて作る。

そして、左下が費用で、右下が収益(売上)となる。

こうすると、今年の儲け部分がちょうどB/Sの剰余金の増加部分と重なり

おさまりがいい



しかも、先ほど説明した「近未来キャッシュキャッシュの循環」が

ぐるぐる回る矢印で表現できるので、

カッコいい




しかし、この表現には非常に大きな欠点がある。

それは、B/Sの「左が現物、右が存在理由」

もしくは「左がリアル、右がバーチャル」という大原則が

ピンぼけ



することだ。

そして、この図は一見「かっこいい」が、会社が太るプロセスを

シンプルかつ機能的に



表現しているとはいえない。


そこで、次の節では全く異なった太るプロセスの説明を行いたいと思う。



会計の力学



ニュートン力学を創った時、「真空、無重力」という(宇宙)空間を考えた。

地球上には有り得ないこのような空間を想定することによって

非常にシンプルで自然な理論体系を創ることができた。


これと同じように、瞬間瞬間のB/Sという

会計の常識では有り得ない



ものを考えることによって、会社が太るプロセスを見ていこう、と思う。

(もっとも、B/Sがスナップショットだということを考えると

実際の計算は不可能だが、理論的には毎日、毎時のB/Sというのは自然な考えだと思う。)


とりあえず、会社としては小さな商店を考えてみる。

ある日、その会社は1万円のお金を使って、商品を卸売り業者から買ったとする。

すると、その日のB/Sでは、現金が1万円消滅し、棚卸資産である商品が1万円分増加する。




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つまり、B/Sで現金→商品(棚卸資産)の変換が起こったことになる。


次の日、その商品が2万円で売れたとする。

すると、1万円の商品(棚卸資産)→2万円の現金の変換が起こったことになる。




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そして、その差額1万円の存在理由は

「その会社が自分で獲得したもの」なので、剰余金となる。


メーカーなどの会社だと、棚卸資産の動きがもう少し複雑になるが、

基本的に現金→棚卸資産→現金の循環を繰り返すことによって、太っていく。


結局、B.Sの左側の棚卸資産(近未来キャッシュ)と現金(キャッシュ)の循環を通して、会社は

たくましく



太っていくわけだ。



普通、年度内にキャッシュになってしまった近未来キャッシュは費用として扱い

損益計算書に記載される。

しかし、日々のB/Sをもし作ったとすると

このようにB/Sの左側で近未来キャッシュキャッシュの循環が起こっていることになるのだ。



1年に一度の決算では、隠れてしまう

「近未来キャッシュキャッシュの循環」だが、

毎日毎日、または、瞬間瞬間のB/Sを作ったとすると

このような形で表へあらわれてくる。


では、この近未来キャッシュキャッシュの循環をするものは

いったい何か?

それは、とどのつまり

人間



だ。

従業員がお給料を貰って、近未来キャッシュキャッシュの循環を行う。

図にすると、



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こうなる。


人件費以外に店舗の賃貸料とか広告宣伝費など、いろいろな経費を会社は払うので

図では「人件費など」という書き方をしている。


結局、会社は経費を使って

近未来キャッシュキャッシュをぐるぐる

ぶん回し



太っていくわけだ。


1990年代、土地バブルが崩壊して、不良債権に苦しむ企業が続出した。

その時、マスコミは、こぞって「バカな会社だ!」みたいな論調で批判したものだった。

しかし、バブル真っ只中の時、土地を転がしていた会社は

まさに、近未来キャッシュキャッシュの循環をぐるぐるやっていたことになる。

つまり、「値上がりするものを買って、すぐ売る」という行為は

会計的には

極めて、まっとう



経済行為だったのだ。

(但し、負債が大きくて株主資本/自己資本が少なかったのは会計的にも問題だった。)


このように、「近未来キャッシュキャッシュの循環」という概念で

会社が太るプロセスはシンプル、かつダイナミックに表現することができる。

しかし、残念ながら、上に示した近未来キャッシュキャッシュの循環図はまだ不完全と言わざるをえない。

そして、この近未来キャッシュキャッシュの循環を完璧に説明するためには

次の節で説明する「減価償却」の概念が必要になる。

そして、これこそが会計の

美しさ



のクライマックスなのだ。


減価償却って何?




会計を勉強する人にとって、第1関門がB/Sで、第2関門が減価償却だ。

だいたいの人は、損益計算書まではついてこれるが、

貸借対照表、つまりB/Sの理解(第1関門)で挫折する。

しかし、ここまで読んでこられた方は、

ここは楽々クリアーしているはずである。

この節では第2関門である減価償却をクリアーして頂きたい、と思う。

まず初めに、減価償却

ありがちな



方法で説明してみよう。


「機械や工場などの価格の一部を毎年少しずつ費用として処理し

対象となる機械や工場のB/S上の価格をその分減額することを減価償却という。」

その理由としては、「機械や工場などの設備は使うとその価値が減っていくでしょ?

だからその価値を減額しなきゃいけないのよ!」

というような説明がよくされる。


なんだか

わかったような、わかんないような



説明だ。

図にしてみると、少しだけわかりやすくなる。




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初年度に、あるメーカーが1億円を使って工場を建てたとする。

すると、その会社のB/Sには1億円の現金の消滅と

1億円の建物(固定資産)の増加が記載される。

次の年、建物の減価償却が行われ、建物の価値は0.8億円になっている。

そして、そのまた次の年は、建物の価値は0.6億円になっている。

それは、建物が老朽化して

価値が減っていくからだ



という説明がよくなされる。


でも、この説明では疑問がいくつか沸いてくると思う。

まず、思いつくのは、

「買ってから一度も使っていないような設備でも減価償却しないといけないの?」という疑問だ。

これに関しては、

使おうが使わなかろうが



減価償却しないといけない、というのが答えとなる。

もし、未来永劫使う可能性がないものなら、全額費用として処理しB/Sから消去するのがスジだ。

つまり

使うと価値が減るので減価償却する



というのは、おかしな説明だということがわかる。


別に価値が減ろうが減らなかろうが、設備の減価償却はしなければいけない。


次に考えられる疑問は、

減価償却が終わった設備は、もう使っちゃいけないの?」

というものだ。


これについては、もちろん、使えるものは、どんどん使っていい。

また、売れるものなら売ってもいい。

但し、減価償却が終わった設備は、B/Sの左の資産の中にはカウントされない。

これが、会計原理の例外中の例外だ。

つまり、減価償却の終わった設備は、現物のくせして、資産ではないのである。


では、なぜこんな

超、めんどくさい



ことをするのだろうか?


その理由は2つある。1つ目の理由は

急にやせて見られたくない



というもので、会計の本には、よくこの理由が説明されている。


もし、固定資産の購入を経費で一括処理したとすると、



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上の図のような事態が起こる。つまり、固定資産を購入した年に

B/Sが1億円も減ってしまう。

粉飾決済をしてでも、太ってみせたいのに、

これは一大事だ!


これはダイエットでいうと、(意味が逆なので)

激太り



に相当する超やばい出来事だ。


だから、確かに、会社にとって大きな買い物は、

毎年少しずつ経費処理する方が都合がいい。


しかし、実は、ただ単に太って見せたいから「減価償却」があるわけではない。

これまで述べてきた「太るプロセス」を完璧な形にするために

減価償却」なる概念が存在するのだ。


前節で示した図を再びお見せする。



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この図に決定的に不足しているものがある。

それは、近未来キャッシュキャッシュを循環させるための

設備



だ。



近未来キャッシュキャッシュを循環させるために、

メーカーなら工場が必要だし、商社でも倉庫などの設備が必ず必要となってくる。

しかし、もし会社がそれらの設備を

保有しているのであれば、キャッシュを消費することはない。

にもかかわらず、固定資産は確かに使っていることを表現したい。


そこで、キャッシュは減らないが、経費はかかる状況を何とか表現するためには

固定資産(設備)の価値が減っていく仕組みを編み出したのだ。



図にするとこんな感じである。



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そして、この図こそが、太るプロセスを、もっともシンプル、わかりやすく、かつ、

美しく表現したものとなる。

最後に減価償却するべき資産(固定資産)の条件を列挙する。



    1. ある程度高額である

      - 管理が大変なので、なんでもかんでも固定資産にするのは大変



    1. 年度を越えて使う予定がある

      - 決算時に使い切っているものは、現物(資産)にはなりえない



    1. 近未来キャッシュではない

      - 近未来キャッシュは商売のタネであり、必ず棚卸し資産に分類する

 



これらの条件を満たすものは、固定資産として扱い、

減価償却するのが普通である。




美しく太るには




会計のもっとも美しい図として





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この図があることは前節で述べた通りだ。

人件費などのキャッシュ移動を伴う経費と減価償却というキャッシュ移動を

伴わない経費を使って、会社は近未来キャッシュキャッシュの循環をぐるぐる回す。

そして、ぐるぐる回れば回るほど、会社は

すくすく太る




でも、これは力学における

無重力、真空中



みたいな理想的な空間での出来事なのだ。

現実には、地球上には空気があり、重力もあるので

物体は慣性の法則通り、等速直線運動するわけではない。


これと同じように、実際の会社では下の図のようにキャッシュ減価償却

リーク



がある。



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つまり、近未来キャッシュキャッシュの循環を

効率100%



で回せるわけではない。




例えば、働いていない従業員にも人件費を出しているし、

あまりお客の入っていないお店の賃貸料も払っている。

また、ほとんど使用されない固定資産もある。


また、図には示していないが、

近未来キャッシュキャッシュの循環にも無駄があるのが現実である。

ほとんどの商品は

はやり、すたり



がある。

人気があると思って作りすぎると、値引き販売をしなければいけないはめに陥る。


しっかりしたビジネスモデルのある会社の場合、

このさまざまな経営資源のリークをできるだけ抑えれば

ぐんぐん太る



ことができる。最近では、いわゆるIT技術を駆使し、

できるだけ無駄を排除するシステムが登場してきた。

これは、結局、近未来キャッシュキャッシュの循環をできるだけ

軽やかに



回す方法なのだ。


無駄を省くのとは別に、もう一つ太るコツがある。

それは、近未来キャッシュキャッシュの循環速度を上げることだ。

例えばメーカーでは製品開発から販売までの時間を短くすることが

このコツに当たる。


例えば、4年に1回しかモデルチェンジできなかった商品を

2年に1回モデルチェンジできるようになると、

(単純に考えると)同じ経費で2倍の利益を上げることができる。


但し、このコツには前提条件がある。

それは、

作れば必ず売れる



という保証があるかどうかだ。

いくら回転速度を上げても、売れないものしか作れない場合は、

在庫の山が出来てしまうだけだ。


結局、近未来キャッシュキャッシュの循環を

無駄なく、高速に



回転させることができれば、企業は美しく太っていく。

それは、まさに、筋肉をつけ、基礎代謝を上げ、

出るところはちゃんと出るように、

美しくやせることができた



ダイエット成功者と同じなのだ。




成熟企業と発展途上企業




「近未来キャッシュキャッシュの循環」を軽やかに、また、活発にする

方法以外に、会社が太る方法がある。

それは、

新しい商売ネタ



を創ることだ。

今風のかっこいい言い方をすると

新たな戦略商品の開発



とか、

新たなビジネスモデルの開拓



だ。

ちょっと前までは経営の多角化と呼ばれていた

「新しい商売ネタの発掘」は、

今生き残っている大企業では非常に難しい。



というのも、大企業(成熟企業)のB/Sは、こんな感じになっているからだ。



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大企業(成熟企業)は、太いビジネスモデルを持っている。

その中で「近未来キャッシュキャッシュ」が音を立てて回っている。

そこへ、新規ビジネスが

ちょぼびょぼ



回ったくらいでは、全社的にほとんど何の影響もない。


利益効率から言っても、新しいビジネスを立ち上げるより

既存の「近未来キャッシュキャッシュ循環」の効率を

上げるほうが

はるかに



効果が上がる。


しかも、成熟企業のライバル会社も、また同じく成熟企業なので、

本業のビジネスの循環を

ノロノロ



やっていようものなら、ライバル会社にあっという間に

先を越されてしまう結果となる。

つまり、大企業(成熟企業)によって

中途半端な多角化



は、一見リスクが低いようで、実は非常にリスクの高い行動なのだ。


大企業が多角化する方法が唯一あるとすれば、

現状のビジネスモデルと比較できるぐらい(せめて2~3割程度)の

事業を買収することだが、

それは経営者からすると

清水の舞台から飛び降りる



ぐらい勇気のいることになる。

なぜなら、ざっくり言うと、何らかの資金調達をして

B/Sを1.5倍ぐらいにしなければいけないからだ。

もし失敗すれば、必然的に本体があぶなくなってしまう。


こんな危険な賭けをしなくても、

(それはそれで難しいのだが)現状のビジネスを高速回転させることが、

もしできれば、利益は

ザックザック



出てくる。

だから、多角化のモチベーションが出てこないのも無理はない。



これに対して、いわゆるベンチャーなどの発展途上企業では

B/Sの状況が一変し、下の図のようになる。




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その会社のエース級の「近未来キャッシュ/キャッシュ循環」であっても、

まだ心もとない

よちよち歩き



状態だ。

経営環境が変化すると、すぐ吹き飛ばされてしまう。

もちろん、これをぐんぐん太くすることも、生き残る道の一つだが、

新しい商品やビジネスを始めることも

大きな選択肢の一つとなってくる。



つまり、発展途上企業では、

生き残りを賭けて



ビジネスの多角化をしなければいけない。

この点が、大企業(成熟企業)と決定的に異なる部分だ。


現在のビジネス環境は、非常に面白い状態となっている。

というのは、自動車や電気などの超巨大企業が群雄割拠する

成熟産業がある一方、

インターネットに代表される発展途上企業が

生き生きと育っている市場もある。

まだまだ日本ではベンチャーがメジャーになっているとは言えないが、

ベンチャー育成の流れは社会的な必然のような気がする。

なぜなら、これまで見てきたように、

大企業が新しいビジネスモデルを(買収なしで)作り出すことは

ほぼ不可能に近い



からだ。

組織的にも、人材的にも、モチベーション的にも、

新しいビジネスモデルを興す専門会社が、社会的に必要で、

それがベンチャーという答えなのかもしれない。




第4章 未来の会計-その先にあるもの





まず初めに、この章の後半は、どの本にも書いていない

超あやしい



ものだということを、予め断っておく。

また、前半部分も会計の言葉をかりて、好き勝手自分の意見を述べている。

しかし、ここまで読まれてきた読者なら

ここで展開している議論に賛同してくれるんじゃないか?と思う。



従業員の価値




よく、会社は

ヒト・モノ・カネだ!



と言われる。



にもかかわらず、B/Sの左側には現物としてのヒト(人材)は

完璧ムシ!



状態になっていることは、今までの話でよーくわかっていると思う。


やはり会社の資産(現物)を正確に測るためには、人材の評価が欠かせない。

会計の流儀に従うと、全ての従業員の価値を足し合わせて、

従業員チームとしてのシナジー部分も足し合わせて

はじき出す



のが、スジだと思う。

しかし、これは非常に難しい。


そこで、時価総額から逆算する体重測定のような方法があるのではないか?と思う。

株式の時価総額が、現時点の企業価値を正確に評価しているかと

いうと、決してそうではないとは思うが、それしか方法が見当たらない。


話は、体重測定のように単純だ。

(時価総額ー株主資本)を、ブランド力などの会社独自の無形価値と

従業員の価値に分ける。(株主資本とは「総資産額ー負債」で自己資本ともいう。)

その配分は、おそらく会社の業界で比率が異なるだろう。

ソフトベンチャーやサービス業などの形態だと

従業員の価値の比率を高く見積もる方がいいだろう。

エイヤでいうと、8~9割ぐらいだろうか?

メーカーなどの業態だと、従業員の価値の比率はそれに比べると

低くなる。比率でいうと、5割ぐらいだろうか?



最近、M&Aがらみで時価総額が注目されているが、

このように時価総額が会社の無形な資産を測る尺度として

注目されてもいいのではないか?と思う。


しかし、繰り返しになるが、「従業員の価値」も

普通の資産と同じように、本来はちゃんと計算して求めるのがスジだ。

もし、できるだけ正確にそれらが測定できるようになったとすると、

それから適正株価を求められる可能性が出てくる。


その時、従業員の価値として特に強調したいのは、

従業員チームとしてのシナジー部分



だ。



つまり、従業員のマネージ(日本語の管理ではない!)の仕方によって、

従業員の価値は

全然変わってくる



ことは、皆よくわかっていると思う。

マネージの良し悪しで、従業員の価値が激しく変化するのだ。




では、良いマネージャーを育てるのはどうすればいいだろうか?

これが非常に難しく、会社の個性(社風)も絡み

一概に「これだ!」といえる回答は出ないと思う。



ただこの話題に関して一つだけ言える事は、今後日本でも社長も含め

優秀なマネージャーの流動化は進んでいくのではないか?と思う。

その最大の理由は、普通

マネージャーへの期待>>>マネージャーの実力



だからだ。

つまり、良いマネージャーは、社会全体で

めちゃめちゃ不足



しているのだ。



また、人間はヒトのマネをする動物なので、

優秀なマネージャーがどんどん流動化し、それを真似る若い人が

増えると社会が活性化するはずである。




出た!自分へのご褒美




よくOLが「自分へのご褒美」として、ブランドの服を買ったりする。

これを見て

ケッ!何がご褒美だ!



なんて思っている人もいるかもしれない。


しかし、このOLの行動は、会計的に非常に理にかなった行動なのだ。


OLやサラリーマンなどは、いわゆる「ホワイトカラー」と呼ばれる「労働者」だ。

「労働者」は、労働をしてお金を貰っている。

会社でいうと、

100%サービス業



という、普通、有り得ない業態となる。


100%サービス業であるOLの近未来キャッシュとは何だろう?

強いて言うなら、「やる気」といった所だろうか?

これを図にすると、こうなる。



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つまり、OLは自らの体にムチ打ちながら、日々の厳しい仕事をこなしている。

これに見合う「やる気」の注入をしないと、

どんどん仕事をする元気がなくなり、キャッシュを生み出せなくなる。

10万円の服を買って、20万円の仕事をするのだ。


一方、商社やメーカーといった会社の場合、

従業員のモチベーションは図の矢印の部分に効いてくる。



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つまり、近未来キャッシュキャッシュをぐるぐる回すのは

従業員のやる気(と実力)となる。

だから、従業員のモチベーションを高める

「従業員へのご褒美」は、一種の

設備投資



と見ることができる。


新聞で、ある会社の社長が社員食堂にホテルのレストランからスタッフを招いた、

という記事を読んだことがある。

この例は

会計的に



非常に理にかなっている。

福利厚生というと、ややもすると「おしつけ」

になってしまったりすることもあるが、

うまい食べ物なら、誰でも大歓迎だ。

会計的には、非常に少ない設備投資で、近未来キャッシュキャッシュの回転速度を

上げたことになる。


反対にいろいろな会社で社員寮が見直される傾向があるが、

これは会計的に間違っている。

若年層に対する「住環境提供」というのは、もっとも効果がある

社員へのご褒美



となる。

非常に少ないお金で、社員のやる気を出させるチャンスを

みすみす手放していると同じことだ。



心のB/S




最後に心のB/Sにチャレンジしたいと思う。

心のB/Sなんて、もうすでに

会計でも何でもない



しかし、会計の概念を拡張して、心の状態を

少しでも形あるものにすることができればいいと思った。


普通の従業員のB/S


まずは、B/Sの左(現物)だが、心の現物とは何だろうか?

いろいろ考え方はあると思うが、ここでは「モチベーション」と「能力」とした。

モチベーションの中には、

良いものと、悪いもの



があると思う。

良いものとは、「仕事かんばるぞ!」とか「家事がんばるぞ!」とか

「勉強がんばるぞ!」などのいわゆる

やる気



だ。


では、悪いモチベーションとは何か?

それは嫉妬心に代表される「他人や社会へ攻撃をする気持ち」とする。

普通の人間は、もちろん良いモチベーションも持っているが、

悪いモチベーションも少なからず持っている。



残る現物「能力」だが、本来これも良い能力と悪い能力に分類されるべきだ。

しかし、実際の所、その区別は非常に難しい。

同じ能力でも、使い方によって180度働きが変わってくる。

典型的な例として、ウィルスソフトを作っていた元クラッカーが、

アンチウィルスソフト会社に雇われて

ウィルス駆逐ソフトを作っているという噂話も聞く。

つまり、能力はモチベーションによって、

どうにでも使われる



ということだ。


さて、次に右側(存在理由)だが、

これは1お金 2責任感 3自分から湧き出たもの という3種類のものがあると思う。

1のお金は、(生きるため+α)という存在理由と考えていい。

プラスα部分は、先のOLの例で「ほしいバッグを買うためのお金」と

いったものになる。


2の責任感は、普通の意味よりずっと広い意味で、

「他人から認められたい感情」といった方がわかりやすいと思う。

3の「自分の内側からほとばしるもの」という存在理由は

普通そんなに大きくない。

これが大きい人で左の能力のある人は、

いわゆるプロ(スポーツ、音楽、芸術、学問)になっている確率が高い。


最終的に配分も含め図にすると、普通の人の心のB/Sはこんな感じになると思う。





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多少の「嫉妬、妬み」がないと、人間とは言えないが、

それがありすぎると不健康になるので注意が必要だ。

また、能力はバランスするもの(存在理由)が思いつかなかったので、

例外として枠外に書いた。




新米ママのB/S


最近、幼児虐待のニュースをよく耳にするようになった。

その中には、本当に悪意がある場合もあるかと思うが、

ほとんどの場合は、普通の善意ある新米ママが

虐待してしまうケースじゃないかと推測される。


新米ママのB/Sを作ってみると、こうなるんじゃないか?と思う。



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まず新米ママは、育児の能力がほとんどない。

昔は地域コミュニティーがしっかりしていて、

大先輩からいろいろ指導が受けられた。

最近は、育児本やインターネットが先生だったりする。



次に、モチベーションだが、実はこれが

不健康に大きい



のではないか?と推測される。

不健康にモチベーションが大きいと

少しだけ悪いものが発生しても、大きな影響が出てきてしまう。

(つまり虐待を引き起こしてしまう。)


この不健康に大きいモチベーションとバランスするのが、右の責任感だ。

責任感が大きくなった理由はいろいろあると思うが、

やはり少子化と優等生化だと思う。


子供が少ないと、育て上げる責任感が大きくなる。

昔みたいに5人や6人も子供がいれば、非常に語弊があるが

一人や二人はどうなっていい



ぐらいの開き直りができた。

また、そうやって開き直らないと子供全員の面倒なんて見られなかった。

しかし、子供が一人しかいないと、ママは子供と

24時間マンツーマン



状態になる。

すると、子供の育ち方に対する責任が、ずんずん重くなってくる。


また、ママの優等生化もよく言われる。

今までの人生で自分の思うような感じでスイスイいってきた人が

育児ノイローゼになりやすいという話はよく聞く。

確かに、子育てなんて、

うまくいかなくて当たり前



の世界に、優等生が放り出されれば、モチベーションの制御が

非常に難しいと推測される。


結局、B/Sを作ってみてわかることは、

肩の力を抜け!



ということだ。もっと積極的に言うと

無責任になれ!



となる。

テンパっている新米ママは、

「子供の人生は子供の人生、親はそれをサポートするだけ」

ぐらいの開き直りをもって育児に望むのがいいのではないか?と思う。



ニートのB/S


ニートのB/Sはご想像の通り、このようになると考えられる。



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そう、B/Sがペチャンコなのだ。

生きるお金には困っていない。

大事なプロジェクトを任されているわけではないので責任もない。

また、「自分自身から湧き出るもの」が大きかったら、とっくの昔に

ニートを卒業している。

しかも、経験がないので能力も少ない。

これでは、モチベーションが上がりようがない。


ニートを復活させるための荒療治はお金を必要にさせることだ。

最初は少し

心がすさむ



かもしれないが、そのうち責任感も出てくるし、能力も磨かれる。

でも、わざわざ不自由なく生きている人から

お金を奪うのは

一種の暴力



なので、難しい。


では、責任のある仕事を少しでもやらせてあげる、という選択肢がある。

しかし、これも実は言うほどやさしくない。

というのも、責任を取りたい、または、責任を取ることによって

お給料を貰っている上の世代が、なかなか「責任」を手放してくれないからだ。

あと、残るのは「自分自身から湧き出るもの」を増やすことだが、

これも全然解決策が思いつかない。


結局、B/Sを作ってみても解決策は見つからなかったが、

図にして整理して考えると、少しは気が楽になるかも?しれない。



退職時のB/S


最後に退職する時に、心のB/Sがどのように変化するか見てみよう。

バリバリ働いている状態のB/Sは上の図で、

これが退職すると、責任もなくなるし、お給料もなくなるので、

下の図のようになる、と予想される。





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下の図で、退職者には「能力」があるような書き方がされているが、

実はこれも極めて怪しい。

つまり、会社で培ってきた能力は、普通の社会では

ほぼ使い物にならない



と思って間違いない。



これじゃ、まるでニートと同じではないか!?


そう!団塊の世代の大量退職で予想される事態は

中高年ニート



の増加だ。



今、雇用人口が少なくなる事が問題視されているが、

それよりも、もっと深刻な問題がこの「中高年ニート」問題だと思う。



ボランティア団体か、地域社会貢献団体か、わからないが、

退職者が社会に参画できる仕組みを、早急に創る必要がある。


心の重要性


心のB/Sと題して、いろいろな人の心のあり方を見てきた。

ごらんの通り、精密な議論は全くできていないし、

間違った分析もいっぱいあると思う。

しかし、少しでも心の状態を計量したい、という思いでトライしてみた。

会社を構成する従業員は、紛れもない会社の

資産



だ。そして、その資産である従業員の働きっぷりが

近未来キャッシュキャッシュの循環に

もろ



効いてくる。


自然な流れとして、未来の会計では、従業員の心や能力を測定する技術が

必然的に要求されてくると思う。


あとがき



一部、少し古臭い言い回しがあったのでお気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、

実はこのドキュメントは数年前(2005年)に書いたものだ。


当時はまだホリエモンがブイブイ言わせていたベンチャー全盛時代だった。。

その後、2006年にライブドア事件が起こり、日本のベンチャー熱が冷め

世界経済がヒートアップした後、リーマンショックが起きた。。

そして、今、DeNAやグリーなどのベンチャーが元気になってきている。

回るま~わるよ 時代は回る



今後、またベンチャーが下火になることもあるかもしれないが、常に

新しい時代は必ず来る



そう信じて生きて生きたい。。