物語に出てくる博士の愛した式 ↓
\[\Huge e^{i\pi} + 1 = 0 \]
その数学的な美しさをハートで感じる!
しかも中学生の知識だけで!
それがこの連載の目標です
この式は18世紀中頃に数学者のオイラーくんが発見した式で、代数・幾何・解析という数学の三大分野を融合させる重要な式です。そして、この式はその後のヨーロッパの数学界の発展の礎になり、19世紀、20世紀の産業革命を支えたのです。
そんなとてつもなく意義のある美しい式ですが、それを感じるためにはどうしても微分が必要になってきます。これは中学校では習わないのでこの記事で説明します。
でも安心して下さい。微分はとても自然な概念なので、すぐ飲み込むことができます。そしていい気分になりますwww(微分・積分・いい気分!)
微分=グラフの接線
何のことはない微分とはグラフの接線を求めることです
赤色の接線に(仮想的に)三角定規をあてて、高さ\(dy\)を底辺の長さ\(dx\)で割った値がその点における微分値です
実際の計算の仕方もメッチャ愚直!
接線を求める点(\(x, f(x)\))から少し右にある点(\(x+\Delta x, f(x+\Delta x)\))へ直線(図の青い直線)を引いて傾きを計算したあと、このを0に近づけるだけです
式で書くと、こんな感じ
\[\lim_{\Delta x \to 0}\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}\]
limはlimitの略で限りなく近づけるという意味です
どうですか?メッチャ簡単でしょ!?
微分すると関数になる
で、問題はここからです…
全ての点で接線が引けて、その傾きが求まったとします
すると出来上がった傾きの値は\(x\)の関数になります
つまり関数を微分すると、また(別の)関数になるわけです!
図で説明しましょう
まず 最初、アップダウンの激しい関数があったとします
よくみると \(x=0, x=10\) の2点でその傾きが0、つまりグラフがフラットになってます
この関数を微分したのが下のグラフの関数になります
上の関数でフラットになった2点で、微分した関数の値が0となっているのがわかると思います。また、上の関数で傾きが最も急だった点 \(x=4\) は微分した関数では極大点となっています。
このように関数を微分すると、また別の関数になるのです。
これを記号で書くと \(y=f(x)\) の微分は \(\frac{d}{dx}f(x)\) と書きます。\(\frac{d}{dx}\) は微分するという意味の記号です。
また \(\frac{d}{dx}f(x)\) のことを簡単に \(f´(x)\) と書くこともあります
読み方はエフ・ダッシュ・エックスとかエフ・プライム・エックスとなんですが、普通はただ単に関数エフの微分とかエフエックスの導関数と読むことが多いです。
では、次に具体的な関数を微分した関数がどんな形になるか?を見ていきましょう
\(x^2\)の微分
まずウォーミングアップとして\(f(x)=x^2\)を微分してみましょう!微分の定義通り
\[f´(x)=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{(x+\Delta x)^2-x^2}{\Delta x}\]
右辺の式を展開すると
\[\lim_{\Delta x \to 0}\frac{x^2+2x\Delta x+{\Delta x}^2-x^2}{\Delta x}\]
\(x^2\)が相殺されて消えるので
\[\lim_{\Delta x \to 0}\frac{2x\Delta x+{\Delta x}^2}{\Delta x}\]
分母・分子に\(\Delta x\)があるので割り切れ
\[\lim_{\Delta x \to 0}(2x+\Delta x)\]
と簡単な式になります。
ここで\(\Delta x\)を0に限りなく近づけていくと、結局第1項だけが残り
\[f´(x)=2x\]
ということになります。
\(f(x)=x^n\)の微分
結論を先に示します
\[\large f(x)=x^n \Rightarrow f´(x)=nx^{n-1}\]
この式は高校数学で何回も何回も出てきます。証明も簡単なんですがとにかく覚えましょう!
その意味する所はこんな感じです…
多項式を微分すると次数が1つ下がる
つまりどんなに複雑な関数でも多項式で表されるとすると、その次数(n)回微分すると定数になってしまうんです!
この性質はとても重要なので心の隅に留めておいて下さい…
公式の証明
\(f(x)=x^n\)なので極限を求める式は
\[\frac{(x+\Delta x)^n-x^n}{\Delta x}\]
分子の式を展開すると
\(x^n\)が相殺され\(\Delta x\)で割るので
\[nx^{n-1}+\frac{n(n-1)}{2}x^{n-2}\Delta x+\dots+(\Delta x)^{n-1}\]
となる
そして\(\Delta x\)を0に近づけるので、この式の2項目以降は0になって
\[\large f´(x)=nx^{n-1}\]
が導かれる
\(f(ax)\)の微分 (\(a\)は定数)
これも結論を先に示すと…
\[\large \frac{d}{dx}f(ax)=af´(ax)\]
となります。この式も後々使いますので頭の隅に留めておいて下さい。
証明は少々技巧的でして…
\[\frac{d}{dx}f(ax)=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{f(a(x+\Delta x))-f(ax)}{\Delta x}\]
ここで\(a\Delta x=\Delta t\)とおくと\(\Delta x=\frac{\Delta t}{a}\)となり
\[\lim_{\Delta t \to 0}\frac{f(ax+\Delta t)-f(ax)}{\frac{\Delta t}{a}}\]
\[=a\lim_{\Delta t \to 0}\frac{f(ax+\Delta t)-f(ax)}{\Delta t}\]
\[=af´(ax)\]
となります
ここで気をつけなればいけないのは
\[\large \frac{d}{dx}f(ax)=af´(ax)\]
この式の左辺は\(y=f(ax)\)の微分で、右辺は \(f(x)\) の導関数に \(ax\) を代入した式に \(a\) を掛けたものという意味です。超紛らわしいので気をつけて下さい。
早まって
\[\large f´(ax)=af´(ax)\]
と書いたりすると、結局\(a=1\)とかになっちゃいます
まとめ
いかがでした? 微分の定義から始まって、具体的な導関数の計算までやっちゃいました。 若干、抽象化の壁はあったものの比較的楽に微分を受け入れられたのではないでしょうか? ちなみに積分は微分の逆演算で微分と密接に絡んでいるんですが、オイラーの公式の説明には直接必要ないので、ここでは説明しません。
さて、いよいよ次から三大役者(\(i, \pi, e\))の登場です!