最近、仕事の方が忙しくなかなかアップできません..
今回もお蔵原稿の復活編です。
若い人はあまり馴染みがないかもしれませんが、昭和の時代、松下幸之助、本田宗一郎、井深大というカリスマ経営者・創業者がいました。松下幸之助は“経営の神様”と謳われ、本田宗一郎は藤澤武夫と共に世界のホンダを創り、井深大は盛田昭夫と共に世界のソニーを創りました。
私は若い時から経営に興味があって松下幸之助さんが書いた「指導者の条件」を読んだりしていましたが、そのタイプは典型的ではなく不確定なままでした。
今回、本書を書くにあたって、「どうしてもこの5人のタイプは確定してみたい」と思い、参考文献や映像を見ました。そして出た結論を述べたいと思います。
5人の中で最も典型的なのが本田宗一郎さんでタイプ7です。“豪快”、“豪傑”という形容がぴったりのタイプ7です。好きなものにはトコトンのめり込み、地位、名誉には全く頓着しない。こだわりが強い分、部下を情緒的に叱ったりしましたが、私利私欲がなく、カリスマとして人々から愛されました。社長を辞める引き際も見事で、死ぬ際も延命処置を望まなかった所はアインシュタインと同じです。
次にわかり易かったのは、同じタイプ7の盛田昭夫さんです。明解で自信のある語り口、何事も人のやっていないことを好む性格、直感的な決断の仕方と高い実行力、そのどれをとってもタイプ7的です。
ちなみに、ホンダにおいては、技術の本田、経営の藤澤、ソニーにおいては技術の井深、経営の盛田とよく言われますが、技術の本田と経営の盛田という組み合わせはあり得ません。お互い得意な分野が異なっていても、同じタイプ故に共同経営は出来ないのです。なぜなら、共同経営をするためにはお互いの能力が補完される以上に、お互いを惚れ込み、絶大なる信頼関係を築く必要があります。タイプが同じだと、相手が自分にない能力がある事はわかったとしても、この“惚れ込む”というエモーショナルな部分が欠落してしまうからです。
本田宗一郎さんと盛田昭夫さんという、同じ経営者で、しかも同じタイプ7であっても、非常に能力が違う人が活躍したことは、特筆すべき事です。「レッテルを貼るな」でも述べましたが、それぞれの人の生い立ち、こだわり、能力によってその表現形は全く異なってきます。同じ経営者という職業であっても、こんなに表現形が異なるわけです。ですので、自分も含め、皆さんは自分にしか出来ない自分の人生を描いてほしいと思います。
話を元に戻しましょう。井深さんのタイプは映像を見て、すぐにピンときました。タイプ5です。どうしてピンときたかというと、タイプ5の知人で全く同じしゃべり方、表情をする人がいるからです。ちなみに、SMAPの中居君も、全く同じ笑い方をするタイプ3の知人がいて、それがタイプ判定の決め手になりました。
井深さんがタイプ5だという仮説を立てて、文献をいろいろ見てみると、ありました、その証拠が。「本田宗一郎と井深大 ホンダとソニー、夢と創造の原点」という本の中で、ご長男の井深亮さんが、家ではよく一人で遊んでいた、ジョークが好きだった、人を叱るのは不得意だった、という話をなさっています。この肉親の身近で見た観察結果が決定的な証拠です。そのどれもタイプ5の特徴を現しています。
「タイプ5の部屋」で、タイプ5は名参謀になれるが、指導者としては向かないという趣旨の話をしました。そして、ソニーが成功した理由は、盛田さんが井深さんの部下ではなく共同経営者だった所にあると思います。おそらく節目節目での(時には非情な)決断と実行は盛田さんが主導でやってきたのではないか?と想像します。
そして、井深さんは本田宗一郎さんとも非常に仲が良かったようです。タイプ7好きのタイプ5だったんですね。
最後に残ったのは、松下幸之助さんと藤澤武夫さんです。この二人ともタイプ1とタイプ9で悩みました。そして出した結論は、松下幸之助さんがタイプ1で、藤澤武夫さんがタイプ9です。
お二人とも、理想主義、現場主義、部下に厳しい、そしてシステム志向など、かなり共通する特質をお持ちです。しかし、詳細に文献を読んでいくと微妙に違うようです。松下幸之助さんの場合、その判定の決め手はインタビュー映像でした。藤澤武夫さんの場合、映像が入手できなかったので、残念ながら推定の域を出ませんが、ロマンチスト、無口で口下手だった、というのが判定の決め手です。この2つの特徴はタイプ1にはあまり出てきません。
松下幸之助さんの判定ですが、これは相当迷いました。その強烈な高い理想とシステム志向を考えると、タイプ9かな?と思いましたが、文献にあった、食が細く睡眠時間が短かったという話と、几帳面だったという話と、(特に晩年の)決断をなかなか出せなかったという話がタイプ1的だなと思いました。(タイプ1のリーダーは、即断即決という感じからは程遠く、頭の中でああでもない、こうでもないと考えます。)
そしてタイプ1だという仮説を立ててインタビュー映像を見返してみたら、決定的な証拠がありました。それは、まだ幸之助さんが若かった頃の話です。起業した会社が順調に行き従業員が数十名にまでなった頃、それぐらいの人数になるとどうしても“悪いことをする奴”が出てくる。それが許せなくて3日間寝られなかった、と言っています。おそらく自分の目を盗んで油を売ったり、店の商品をくすねるようは人がいたのでしょう。それを許せなくて、しかも、3日も悩むあたり、極めてタイプ1的です。
そしてインタビューは、こう続きます。3日悩んだ後、こう考えた。日本という国を考ええると、天皇陛下をもってしてでも悪人を排除できないという現実がある、一介の商人である私が悪人をなくなんて、とんだ思い違いじゃないか?という趣旨のことを言っています。(松下幸之助さんは明治生まれの人で、当時は天皇が国を統治していました。)
そして、そう(=悪人を許そう)と考えると気持ちがすーっと楽になって、それ以降、経営が極めて順調に言った、と言っています。
この逸話は非常に示唆に富んでいます。タイプ1の大きな欠点として、自分を含めて“人に厳しすぎる”とうことがあります。これを松下幸之助さんは悩みぬいた挙句に、非常に大きなスケールの比較を導入することによって解決したのです。そして、“経営の神様”になっていきました。
タイプ1の部屋でも述べましたが、求道者としての側面が強いタイプ1は経営者で大成することはあまりありません。それがこの“人の不真面目な所を許せない”欠点に原因があります。松下幸之助さんは、思い悩んだ結果(この思い悩む過程が重要です)、人を許せる境地に達しました。リーダーを志すタイプ1には大変参考になる逸話だと思います。